カナダ留学小話⑥
中国語
1時間目のESLと3時間目のカナダの歴史の授業は、ほとんどが同じ顔ぶれだった。日本人がわたし1人、韓国人が1人、ベトナムのハーフ1人、東欧の男子1人、残り6人は中国人だった。
英語を学びに来たのに、中国語を学びたくなった。休み時間に彼らが何の話題で盛り上がっているのか知りたい。様子を見る限り、しょーもない内容なんだろうけど、それでも気になる。カナダの歴史の授業を担当している日系カナダ人の先生も「僕も中国語が分かるようになりたい」と嘆いていた。
大学合格前から、どの第二外国語を選ぶか悩んでいた。フランス語にも興味があった。受験が終わってすぐに本屋に行き「基礎から学ぶフランス語」のドリルを買った。さっそく家でCDを聴き、発音を真似たが、痰をからませたような「R」の発音ができず、断念した。
結局、中国語を選んだ。しかし、中国の文化にハマらなくて、本格的に学ぶ気力は起きず、翌年は履修しなかった。
漢字を覚えている分、欧米の人より楽に中国語を習得できる環境にありながら中国語を学ばないのは、もったいなく思えた。けれども、仕事で使う必要を迫られるか、よっぽどその国の言語と文化が好きでない限り、言葉は身につかないだろうなぁと思った。
チャイナタウン
ESLやカナダの歴史の授業とは関係なく、日本語クラスで出会った女の子がいる。中国とフィリピンのハーフで、カナダ国籍の女の子。つまり、カナダ人だ。
わたしがホストファミリーと音信不通であることは述べたが、この子とは今も気まぐれに連絡を取っている。留学で出会った人たちの中で未だに連絡を取るのはこの子だけだ。
チャイナタウンに住む彼女の家に、朝早く遊びに行ったことがある。大きくて立派な家だった。
朝からギョーザが出てきたときは驚いた。そのときはたまたま、冷蔵庫に有り余るほど冷凍ギョーザがストックされていたのだと思う。わたしもいただいた。ポン酢のようなサッパリとしたツユにつけて食べた。小ぶりで、ぷりぷりとしていて、とても美味しかった。
その子の家には30本くらいWiiのソフトがあった。飽きるまでゲームで遊び、その後は近くのショッピングモールに行った。アメリカンイーグルで白いスカートを買ったことは覚えている。
UGLYなセーター
家に帰るとママがおかしなセーターを着ていた。トナカイがプリントされた黄土色のセーターで、クリスマスのオーナメントの巻貝がジャラジャラとぶら下がっている。
曖昧な表情でママを見ると「どう?このセーター!」と聞かれ、ドキッとした。
「今日は友だち15人と、醜いセーターコンテストをしたんだ!優勝しちゃった♩」
と言っていた。テーブルには景品が置かれていた。楽しそう!と思った。本気のファッションセンスじゃなくて、そういうイベントだったのかと分かって、ホッとした。