好きな場所はたくさんありますが、そのひとつに空港の展望デッキが挙げられます。
夜の空港の展望デッキは、静かなことが多いです。ひんやりとした空気を吸って、駐機場の夜景を眺めていると、活力を得られるというか、「これからがんばるぞ!」という気持ちになります。
一眼レフも構えてみますが、わたしはキットの標準ズームレンズとF2.8のパンケーキレンズしか持っていません。ズームレンズは手荷物に入れるとかさばるので、大抵スーツケースに入れています。展望デッキには思いつきで寄ることが多いので、事前にズームレンズを手荷物に移していることは、殆どありません。スマホのカメラは広角で広い範囲を写せますが、鮮やかさが今ひとつです。だからいつも空港夜景は、不向きなパンケーキレンズで撮影しています。
今回も展望デッキを訪れ、偶然見かけた飛行機を、パンケーキレンズを付けた一眼レフで撮影します。デッキにはわたしの他にも、もう一人、二人、います。
もう戻ろうかなぁと出入口の方へ向かったときに、中国人の若い男性に日本語で話しかけられました。その方はわたしが来るよりも前に展望デッキにいて、離着陸する飛行機をずっと眺めていました。
「20:44に離陸するJALのこの機体、撮れましたか?」
どうやらその方はお目当ての機体が離陸するのを待っていたみたいですが、撮り逃してしまったようです。わたしは手前に停まっていた大韓航空の飛行機を、ズームのできないレンズで適当に撮っていただけなので、残念ながらJALは撮っていませんでした。そもそもJALが通っていたことに気づきませんでした。
「そうですか...ありがとうございます」
その方はぺこりと軽く頭を下げ、残念そうな顔をして空港の中へ戻っていきました。
わたしも中に戻り、帰りました。