今年も土手の季節がやってきました。
今年は5人で江戸川土手歩き!
のはずが、当日はあいにくの雨。
土手歩きはほどほどに、葛飾柴又のレトロな街並みと、すみだ水族館を満喫しました。
それでは、どうぞ!
2021年10月31日(日)
11時に柴又駅前でみんなと会う約束をしている。
乗換駅に停車し、電車から降りようとしたそのときだった。
「おひさしぶりです!」
突然声をかけられて慌てたわたしはイヤホンを外そうとして間違えてマスクを外した。
「わっ、ひさしぶり!!」
後輩ちゃんだった。
無限土手歩き部は某大学某サークルの派生同好会だ。
わたしはサークルに最後の方ほとんど顔を出さなくなったやる気のないメンバーであるため、「後輩ちゃん」なんて呼ぶのはおこがましいにも程があるのだが、ネットの海に本名を公開するわけにもいかないし、これまでの土手歩き関連の記事でもそう表記してきたので、便宜上そのように呼ばせていただく。
1年ぶりに会って興奮したわたしたち2人は、改札を抜けて柴又駅前に到着してからも喋り続けた。やがて同期の友人と先輩が現れた。コロナ禍になってから人と会う機会が激減したので、とても嬉しく思った。
そして、今回初参加の先輩が現れた。後輩・先輩・先輩は交流があるそうだが、わたしと同期は先輩に会うのが3年半ぶりで、なんだかもう感動してしまった。
5人は円になって近況報告をはじめたが、歩かないと進まないので歩き始めた。
開始30秒で先輩が、参道商店街の一軒目の店でお好み焼きを買った。屋台のように、透明の使い捨て容器に入れてもらえるお好み焼き。後輩ちゃんは先っぽにコアラのマーチがついたチョコバナナを食べていた。お祭りみたいで楽しい。こういうの、久々だ!!
わいわいとしゃべりながら参道を進む。100mも進んでいないところで「高木屋老舗」を発見。和菓子・食事処の名店だ。
わたしと後輩は名物の草だんごを買い、同期の友人はどら焼きを買った。お茶と一緒にお盆に乗せてもらって、店先のベンチではむはむと食べた。草だんごはマイク・ワゾウスキのような緑色で、もちもちとした食感をしている。レトロな街並みに自転車乗りのおっちゃんが過ぎ行く光景を眺めがら、よもぎとあんこの風味を愉しんだ。
柴又帝釈天
柴又は映画「男はつらいよ」の舞台で、「こち亀」でお馴染みの亀有の隣町だ。東京の東に位置し、川を渡れば千葉に入る。
柴又帝釈天で参拝して、庭園を拝見した。同期・先輩・後輩はずんずん進む。先輩はゆっくりと庭園を眺めている。鯉が多い。
「給茶機だ。古いものの中に急に近代的なものが出てくるの好き」
仏様にチーバくんのワンカップ大関がお供えされていた。
「月日経ってそうですね」
「ここに置くとそれだけで意味を持っちゃうから誰も下げられなくなる笑」
同期参加前、無限土手歩き部は「新規リピート率0%」という記録を保持していた。今回は先輩が初参加のため、「二度と行かねえ」と思われないようにしたいと思っていた。数日前まで曇り予報だったので、当日はすべて行き当たりばったりでいく予定だったが、直前に雨予報に変わり、前日の夜に慌てて下調べをした。修学旅行の自主研修を計画している気持ちになって、わくわくした。
土手歩きの呼びかけをしてくれたのは先輩で、エリアの提案は後輩、「美の巨人たち」柴又特集の放送と雨天情報を教えてくれたのは先輩、複数の行き先候補に対して「こういう理由でここがいいと思う」と反応してくれたのは同期の友人で、全員のことばで今回のおでかけが決まった。
山本亭
御朱印をいただいて帝釈天を出て、山本亭に向かった。カメラ部品メーカーの創立者、故山本栄之助さんの住居として大正末期に建てられた、和洋折衷の建築物だ。すてきな場所の予感がしたので、できれば行きたいとわたしが思っていて、寄ってもらえた。
家の前まで来たし入館料100円なので、ここまで来たら入ると思っていたが、庭を過ぎてそのまま通り抜けそうな雰囲気だったので、
「ここに入りませんか?」
と呼びかけた。そしたら、たまたまわたしの隣に防空壕があった。
「落ち着いて、令和の日本は平和だよ!」
「ちがいます! 山本亭の方!!」
中に入った。歴史感じる木造家屋で、大きな窓から庭園がよく見える。優雅にお茶を飲むのにこの上ない環境だ。赤い絨毯の上を歩くと、靴下の繊維が擦れてぺたぺた張りつく。玄関には人力車が置かれていた。
「雨で、より一層雰囲気があるね」
山本亭を出て庭を抜けると、道路を挟んで土手が見えた。こんなに仰々しく土手への道が整備されているのは珍しい。
このとき、この日の中で一番雨風が強かった。東屋で雨宿りをしつつ地図を確認して、金町まで一駅分だけ歩くことにした。
「秒で着きますよ」
「22分=秒 の感覚かぁ…」
土手を歩いていると、地元少年団のサッカー試合を目にすることが多い。その日はラグビーっぽい試合が行われていた。ランニングやサイクリングをしている人たちともすれ違う。
わたしは友人に会社の話をしていた。彼女はわたしの話を聞いて、「群ようこが小説で書きそう」と言った。わたしは話しているうちに声が大きくなり、自分が嫌になった。
埼玉県飯能市のムーミンバレーパークにある「水浴び小屋」に似た建物が現れたので写真を撮った。夏にムーミンたちが釣りや海水浴に使うためムーミンパパが作った小屋で、物語に出てくる。
「冬になるとトゥーティッキが現れるかも」
「どんなキャラ?」
「しましまの服を着た、ムーミン谷のエドシーラン」
(調べた)「似すぎじゃない?」
わたしたち5人は川沿いに出て少しの間ぼーっとした。木陰にきったないクッションがあって、足の甲で持ちあげると、使い捨ての紙コップとハートチップルのゴミが隠されていた。
北千住 牛骨らぁ麺マタドール
金町まで歩いたわたしたちは、電車で北千住に移動した。駅前は衆議院選挙運動で賑わっていた。
北千住は乗換に利用される大きな駅だから、受動的に歩くとチェーン店しか目に入らない。12時を過ぎてみんなお腹が空いていた。
この土地ならではのごはんが食べたいと思い、ネット検索で上位に出てきた店「牛骨らぁ麺 マタドール」に行った。
店の前には少し列ができていて、並んだ。店内はカウンター8席で、空いた順にひとりずつ入る。食べるスピードに個人差があるので、同期 ⇒ わたし ⇒ 先輩 ⇒ 後輩 ⇒ 先輩 と、ゆっくり食べる人順に店に入った(先輩がゆっくりなのではなく、後輩が早い)。
わたしは焦って券売機左上の「贅沢焼牛らぁ麺(味玉入り)¥1,050」を押した。塩ラーメンの気分だったけど、看板メニューはどれだどれだこれか?と思って押したら醤油ラーメンになった。
座るときに左隣の人に膝をぶつけてしまい、あああああすみませんと思った。食券を出した。カウンター席のみの個人店のラーメン屋に来たのが久しぶり過ぎて緊張した。どきどきしてたら後ろから友人がおしぼりとセルフで注ぐ水を手渡してくれた。
目の前の厨房で、切られるローストビーフを見る。
ラーメンが出てきた。写真を撮るのもなんだか恐縮です。
スープから、いただきます。
わ、ちょっとクセあっておいしい!!!個性派だ。
麺はつるつるつるっとストレート。
チャーシューの代わりにのせられたローストビーフが、名前の通り贅沢!!!
ご時世だからか、個人ラーメン店って元々そういう文化なのか、黙食。
ラーメンと会話する時間。至福のひと時。前日もラーメン食べてる。ラーメンおいしい。
隣の席に最後尾の先輩が座った。わたしたち御一行、全員店に入った。
わたしがラーメンを半分以上食べた頃、先輩の前に贅沢焼牛塩らぁ麺(大盛)、ごはん、たまごが次々に出てきた。どんだけ食うんだ!?と驚いた。
店を出たら自分が一番最後だった。わりとみんな同じタイミングで出てきたと思ってる。おいしかった~~。お腹いっぱいになって、みんな眠くなりかけてた。
すみだ水族館
とうきょうスカイツリー駅に移動した。スカイツリーは休業していたけど(営業していたとしても雨や曇りの日は窓から何も見えないので上ってもあまり意味はないけど)、隣のすみだ水族館は営業していて、チケット売り場に並んだ。
コロナ禍で入場制限があるため、事前にWEB整理券を取っておかないと当日券は買えない。私は前日の夜に15:00~15:30入場予定の整理券を取っておいた。恩着せがましいが、我ながら時間の読みが完璧だった。巻いたり待ったりしないでスムーズにチケットを買えた。
実はわたしは6年前にひとりですみだ水族館に来たことがある。大学受験前日、ホテルに前泊したが、部屋にいても慣れない環境で気が狂いそうだったので東京観光をした。やたらクラゲの多い水族館だったことは覚えている。そのときは自分の前にいた関西弁男女のアテレコに耳を傾けながら「うまいこと言うな」と密かに楽しんでいた。
夜景と祭りと水族館はあまりひとりで行くものではない。途中でふと哀しくなる。
大人5名で入場。先輩&先輩の生き物への興味と好奇心。エントランスの水槽で早速盛り上がった。その後、チンアナゴやクマノミを食い入るように見た。
「エビがシャコシャコ砂掘ってんのかわいい」
「ネオンテトラめちゃ光ってる」
「クラゲって脳ないけど目あるんだって。OS搭載してないカメラってこと?」
「マジでクラゲ謎すぎる」
「満を辞してサメの登場」
「Sand tiger shark でシロワニって、虎鮫鰐どれ」
サメ(シロワニ)は左の岩陰からたっぷりと間を取って姿を表した。ゆーっくりと回って、お客さんの方へ頭を向けた。
「完全に自分の強み分かってる動きだ笑」
わたしたちの前には小さな男の子がいて、サメに手を振っている。するとサメは水槽のガラスに接近して、男の子にご自慢の歯とワイルドなお顔を見せつけてから、身体の左側全面を水槽の前に集まる観客に見せて、ゆっくりと岩陰に退場した。
「ファンサすごすぎない」
「ディズニーシーのタートルトークのような…」
動きが完璧すぎて、まるでバーチャル映像のようで、リアリティに欠けた。
ペンギンのごはんタイムを偶然見ることができた。
「ペンギンってかわいいよなー。歩いてかわいい、泳いでかわいい、食べる姿もかわいい。ペンギンって触ったらどんな感じなんだろなー。ふさふさなのかな、毛並み」
すべてのペンギンに公平にお魚が与えられるよう、ペンギンの名前と食べた魚の数をスイムスーツを着た飼育員さんが紙に書き込んで記録している。
「わわ、飼育員さんにペンギン持ち上げられてる」
持ち上げられてどこへ連れていかれるのかと思ったら、これはびっくり!
わたしたちの前の通路をぺたぺたと歩いています。こんな至近距離で見れるとは!!
多品種の江戸の金魚も展示されていた。ちょうどわたしは今、数日にかけて森見登美彦氏の『熱帯』を読んでいるので、同著者の作品『宵山万華鏡』の超金魚を思い出した。たくさんのペンギンを見たときは『ペンギン・ハイウェイ』を思い出した。大学を卒業して2年が経ちそうだが、心は腐れ大学生マインドから全然成長していないのだ。
オットセイもいた。ちょうどこの日はハロウィンで、オットセイの水槽の前にいる金髪のツインテールの女の子がピンクと黄色と黄緑のお花のようなドレスを着ていた。外国人か、ハーフの女の子だと思う。その子は右手に紫色のふさふさ(はたきのようなもの)を持って、オットセイの頭の方にすいーっと動かして誘導し、時にはくるくる回してターンさせていた。妖精がオットセイを操っているようだった。
水族館を出て、ショップを見た。たぶん何も買わないかなーと思いながらお土産を眺めていたら、先輩が躊躇いなくオレンジのチンアナゴの抱き枕(約70cm)とネックピロー、ペンギンのぬいぐるみLを両脇に抱えてレジに並んだ。
「カメラ回っているかのような買い方!笑」
「ロケの買い方だよね笑」
チンアナゴの抱き枕は大きな袋にもなかなか入らず、ニュッと顔を出してニコッと笑っていた。その後、店員さんによってふたつに曲げられて押し込んで詰め込まれてテープで閉じられた。
ショップを出たあとは、テレビ局のグッズショップやインバウンド向けの日本の工芸品や飴細工の店、ポケモンセンターを見た。ナマコブシのぬいぐるみが売られている。チンアナゴとペンギンLと合わせれば、水ポケモンのパーティーが作れそうだなと想像した。
祇園辻利 東京スカイツリータウン・ソラマチ店
喉が渇き、階を移動して辻利で抹茶オレフロートを注文する。辻利があるとは知らず、ラッキーだった。ソラマチには日本的な美味しい店が東京駅のように充実しているんだなぁ、と思った。
イートインスペースはないので、簡易的なベンチに5人で座った。抹茶ラテの上に濃厚抹茶ソフトクリームが浮かんでいて最高だ。サクサクとした抹茶せんべいの食感もたのしい。
ベンチでは仕事や仏教や大学の講義や職場の人間関係の話をした。少しの間、SDGsやサステナビリティの話にも話題が広がった。後輩と先輩と先輩の後ろはビルの夜景だったので、意識の高い話と背景が相まって、ワールドビジネスサテライトのような様相を呈していた。
たぶん2時間くらいベンチで話していたと思う。20時を過ぎてわたしたちは押上駅に向かい、お開きにした。
「次こそ土手を歩きましょう。天気のいい日に!」
第6回無限土手歩きにつづく。