クリスマス・イヴ
昼間は、明日のためにクッキーを焼いた。既製の生地が袋に入っていて、それを絞ってオーブンに入れるだけの、簡易的なものだ。
夜はミサに行った。周辺地域に住むお金持ちの寄付によって建てられた教会らしい。ステンドグラスが煌めき、床は大理石で出来ていた。豪壮な教会で美しい讃美歌を聴き、うっとりした。「メリークリスマス!」と言いながら、家族全員と握手をした。ママとパートナーはほっぺにキスをしてくれた。
キリスト教徒ではないけれど信じていないわけでもない、という微妙な立場のわたしを、仲間外れにすることもなく、すんなりと中へ入れてくれたことが嬉しかった。教会に集まったすべての人が同じ神を信じ、歌を歌って、祝福し合う光景を見て、宗教の持つパワーに圧倒された。日本では感じたことのない気持ちだった。
世界中の人々が信じる「宗教」について、客観的にもう少し知りたいと思った。高校の倫理の授業もわりと好きだった。そうして、文化や地理、宗教について詳しく学べそうな学部がある大学を目指すようになった。
クリスマス当日
朝起きて1階に降りると、テーブルには山盛りのフルーツサラダがあった。
ツリーの周りには、おもちゃの電車がぐるぐると走っていた。
暖炉の傍には靴下が並べられ、プレゼントでパンパンになっていた。
夜は祖父母の家で豪華な夕食をいただいた。おかずが詰められた七面鳥を、おじいちゃんが電動ナイフで楽しそうにカットしていたことを覚えている。
ママに「今日はあったかい?」と聞かれて
「ん?」と言ったら「心」と言われた。
「日本の妹にも、あたたかい心を分けてあげてね」
と言われたから、忘れないように持って帰ろうと思った。
お菓子の家
クリスマスが終わり、年が明けた。
賞味期限間近のお菓子の家を、わたしとパートナーの二人で組み立てた。
見本のようにはできなくて、倒壊した。
「口に入れれば同じ味だ」と言って、これで完成ということにした。