3日目 12月17日(火)
夜遅くまでミュシャのノートにお小遣い帳をつけていた。3時過ぎに寝て7時前に起き、朝食を食べた。スモークチーズ入りのスクランブルエッグを今日もたくさん食べた。くどくてしょっぱい味付けがクセになる。
9時にホテルを出発。外は冷えていて白い息が出る。9時35分にプラハ本駅を出発する、ドイツのニュルンベルク行きのバスに乗る予定。座席も指定されている。
9時15分にプラハ本駅に到着。お水を買って、チェココルナを使いきる。
あれ、バス停どこだ?
バスのマークだと思って走ったら、それはどうやら鉄道のマークだったらしく、プラットホームに着いてしまった。ダッシュで戻る。インフォメーションに聞こうとするけど、切符を買う人の列で混雑している。全然関係のないツアー会社かなにかのカウンターに「バスターミナルはどこですか」と切羽詰まった様子で聞くと、まっすぐ上を指さして「地上です」と言われた。
9時30分、何番線にバスが停まっているのか知らないけど、とりあえず地上に上がる。バス出発まであと5分。
「スーさん、車輪が!!」
エレベーターから降りたところにスーツケースの車輪がひとつ、落ちていた。
(今に限って……!)
たしかに、あっちに走り、こっちに走り、プラハ本駅構内でスーツケースを相当引きずり回した。でも、今、ぶっ壊れるかね?!
そこには見慣れた風景が広がっていた。空港からプラハ本駅に着いた時に見た光景。乗り場はまだ、見当たらない。人がたくさんいるバス停には「ブダペスト行き」と書いてある。
日本人の女子大生のような人がふたりいたので「Excuse me」と尋ねたが、韓国人だった。「どこに行きますか」と聞いたら「Viena」、つまり、ウィーンに行くとのことだった。東欧風の女性がわたしのチケットを確認して助けてくれようとしたけど、わからないとのことだった。
あたりを見回してもわからないから、諦めてDB(ドイツ鉄道)のチケットカウンターに相談して一本遅らせようと思ったそのとき、道路、分離帯、道路の先に、白地にサンタのイラストが施された、いかにもホリデーのためだけに用意されたバスを見つけた。
「ぜったいあれだーーー!!!」
「Frohe Weihnachten!」はドイツ語で「メリークリスマス!」だと出発前に聞いていたし、これから向かうニュルンベルクは世界一のクリスマスマーケットが開かれる町として有名だし、車体に赤字でDBと書かれていたし!!!
9時33分、エレベーターのボタンを連打。エレベーターが来るのを待つ間に、上の写真を撮影。あわてて地下へ下り、スーツケースを引いて構内をダッシュで横切り、向かいの道路に上がりました。
そして、出発直前にバスの女の人にユーレイルパスのチケットを見せて、スーツケースを預け、よくわからないまま2階の席に着きました。
とりあえずは、乗れた……!
でも、この席でいいのかな……。
さっきの女の人、チケット見て何か言ってたな。指定席だけど来ないと思われて座席変更されたのかな。パスポート見せて、って言っただけかな?もしも高速バスみたいに各停留所で止まって、来た人が「あれ!? わたしの席に人いるんですけど!?」ってなったら気まずいな……。
Tさんに荷物を見てもらって席を立ち、トイレに行くふりをして走行中の車内を移動。さっきチケットを確認してくれた女の人に訊ねようとしましたが、姿が見えません。助手席かな?
運転席の方は黒いカーテンが閉められていて、気軽に入れない雰囲気。でも、聞かなきゃと思って前の方に歩いていくと、運転席とカーテン越しに背中合わせになる形で座っていた、体格のいい男の人たちに「どうしたの?」と聞かれました。
「ギリギリにバス停に来て」「正確な席を聞き取れなかったから」「聞こうと思うんです」みたいなことを、たどたどしい英語で伝えました。
そしたら、周りにいた男の人たち3人が、代わる代わる教えてくれました。
「空いている席ならどこに座ってもいいんだよ」
「え!」
「これは直行バスでどこにも停車しないから」
「なんなら床で寝てもいいんだよ!笑」
「No No No 😂」それは遠慮します😂
「ありがとう」と言って、2階のTさんがいる席に戻りました。
出発時にはクリスマスの愉快なメロディが流れていた気がしたし、窓の外にはカラフルな家々が見えた気がしたんですけど、プラハの景色に別れを告げる暇もなく、バスは市街中心部を出て高速道路のような道へと進んで行きました。
10時。やっと落ち着けました。
とりあえず、乗れて良かった。
ユーロスターのときにもやらかしていますが、旅行中はたっぷりと余裕を持って行動しないと、だめですねぇ。今回の旅は移動が多いので、しっかり反省して、今後に活かします……。
▼蘇るトラウマ
霧がすごい。自分が運転手なら「今日は運転控えようかな」と思うレベルで霧。
さてさて、昨日買ったお楽しみが……^^*
わくわくお菓子タイム🍭
結局、無難なチョコが一番おいしい。
見た目からは想像できないけど、この星はピュレグミです。ジュレのないピュレグミ。黄色はレモン(?)です。青は不明。化学調味料や人工甘味料をふんだんに使ったような味。赤はラズベリー、かな? ラズベリーに寄せた、人工甘味料の味。
うわ、うわ、このベリーのようなお菓子は、なに?
形容しがたい気持ち悪い味と食感。残しました。
糖分過多でそろそろ甘いものにうんざりしてきた頃、Google Mapで現在位置を確認しながら窓の外へしきりに目をやり、チェコからドイツに入る瞬間を見ようとしていたのですが、知らない間に国境は過ぎていました。
いつの間にか霧も晴れて、太陽の光が雲の間にふんわりと広がっています。
冬の南ドイツの第一印象は「光がやわらかい」 。
ゆったりと時間が流れていそうです。
久々に自然を見て、心が安らぎました。
まだ何も見ていないのに、既にドイツ好きだわ。
写真はないのですが、手前に緑と家があって、間に長身の針葉樹がずらーっと並び、奥には山が連なって、霞がかかって白く青くなっている、一枚のジグソーパズルのような美しい風景を通り過ぎました。一瞬の出来事!
チャーリーブラウンのアルバムがとても合いました。
針葉樹の見える自然の中をずっと走ってきましたが、だんだんマクドナルドやガソリンスタンドが出てきました。ニット帽をかぶって手袋をはめたおじさんが自転車を漕いでいます。
わたしたちの前の席に座っていたワイルドな欧米人は、とてもリラックスしていました。椅子を後ろに倒し、前の座席の頭の部分に長い脚を伸ばしてかけています。紙袋からオレンジを取り出してつまみ、続いてリンゴを丸齧りし始めました。そのとき「間もなく到着します」というアナウンスがかかり、慌ててリンゴを食べていました。
ターミナルに着く前に、ガラス張りの建物の前を通って、自分たちが乗ってきたバスの外見を再確認しました。「あぁ、そういえばこんなラッピングのバスで来てたんだったわ!」と思い出して、笑いました。
乗車時間約3時間半。13時06分、ニュルンベルク駅到着です。
「まずは車輪を直さなきゃ」
わたしはエレベーターの前で拾ったスーツケースの車輪をコートのポケットから取り出し、憂鬱な気持ちでスーツケースをベンチの上に置きました。
って、あれ、
「足りていたわ」
車輪の数は5/4。
わたしは見ず知らずの人の車輪を拾い、
チェコからドイツへ運んでしまったらしいです。
アーメン。